建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第35話  韓国両班の集落と住居.4 
      土壁の中の暮らし、閉じつつ開く住居
 
1|2 


 

 
 
 
 
 
 
 
 

 
慶州郊外はなだらかな丘陵地と、それらを囲むように水田や耕作地が多い。集落はその丘陵地と水田の間に、挟まれるように細長く築かれたりする。古い集落ほど道は狭く迷路的になる。その上、人の背丈より高く土壁の塀を家の周りに巡らしたりするから、通路はより狭く感じ、歩いていると多少不安になる。
 
住居はその厚い土壁の向こうにあるのだが、土塀にこれと言った開口もなく、閉鎖的で中の様子が窺えない。家の構えは見せても住まいの内部は知らせたくないと言う事なのか。北の寒い地方なら未だしも、韓国の南部のこうした集落で、このように高い土壁を巡らせ、外部に対して閉鎖的な構えを取るのが私達には不思議に感じる。しかし一度土塀の中に入ると、その住まいの造りはその逆で、驚くほど開放的な構造になっているから面白い。
 
簡単に韓国の伝統住居の造りを説明しよう。一般に住まいの内部は、大きく父親を中心にした男の場「舍廊棟(サランチェ)」と、母親の「内棟(アンチェ)」に分かれている事が多い。大きな家になるとこれらに使用人や家畜小屋、物置、仕事部屋などの棟「行廊棟(ヘランチェ)」が加わる。
 
住居は巨大な一棟の建築として築かれるのではなく、幾つかに分棟された配置をとる。それらの棟の間に、割って入るように置かれているが韓国特有の「庭(マダン)」である。
 
棟の内部は、大小幾つかの部屋に分かれているが家族個人の部屋は明確でない。部屋は個人に対応しているのではなく、家族に対応してその都度や役割が決められるようだ。つまり各々の部屋は家の大切な催し事、例えば季節事の行事や、近隣との関係で用途が変化するである。家は家族の住まいであると同時に、親族や近隣を投影し強く社会化されているのだ。各々の部屋が、家族個々とどのように結びつき、対応しているのか私達には理解が出来ない。並んだ部屋の境は、精々薄い板壁か紙障子戸の類いで、ないに等しい。
 
しかもほとんどの部屋は庭(マダン)に解放されているから、庭から部屋の内部はまる見えになってしまう。個人のプライバシーはどうなっているのだろうか。外部の閉鎖的な構えから、この開放的な造りとファジーな使われ方には理解に苦しむ。
 

 

   

 

 

 


■LINK  ■SITE MAP  ■CONTACT
〒151-0053
東京都渋谷区代々木3-2-7-203
tel : 03-3374-7077
fax: 03-3374-7099
email: toshikon@eos.ocn.ne.jp