オンドルバンが韓国の冬に対応した部屋なら、韓国住居には夏の暑さに対応した部屋がある。
「マル」と呼ばれる板敷きの解放的な部屋である。この寒さと暑さ、冬と夏の両極端な自然気候に対応した二つの部屋を備え持つのが韓国の伝統的住居、特に両班住居の特長となっているのだ。本を辿ればオンドルは寒さの厳しい韓国の北部で発達し、開放的な板敷きの部屋(マル)は南の温暖な地域で多く用いられていたと言う。その二つが合わさり韓国の伝統的住居となっているのだ。
マルとは私達には聞き慣れない言葉である。日本の民家の縁側の造り似ている。厳密に言うと日本の縁側的な板の間は、トエンマル(縁側)と言うらしい。開放的な部屋となっているマルには使用上大きく二つに分かれる。
一つは「大庁(テ-チョン)マル」と呼ばれる板の間。一般に大庁マルは部屋と部屋との間に設ける大きな板の間で、自然や庭に開き、住まいの最も開放的な場になっている。他は楼マルと呼ばれ板の間で、舍廊棟(サランチェ、男の場)や別堂に設けている。他のマルより床を高くし権威を示したつくりにしてある。
マルは床が板の間なら隣の部屋の壁も板や障子となっていることが多い。天井は張らず松の丸太の梁や垂木を剥き出しにして天井を高くさせ、外部に可能な限り開いた造りとさせているのだ。
「外がうだるような暑さの日、麻の着物をきてマルに横になる。涼しい風が部屋を渡り、蝉の鳴く音を聞きながら昼寝をする。薄暗いマルの中から、蒼い夏の空をながめて横になっていると、そこが部屋の中なのか、外なのか、はた自然の中なのか分からなくなる」
韓国の夏の住まい、マルの部屋の思い出を伝える李さんの言葉だ。韓国の住居は夏に合わせているのでも、冬に合わせているのでもない。たぶんに与えられた自然そのものに合わせ、それらに逆らう事なく住いを築いて来たのだ。人々は住まいの中から、四季を通し自然を味わい、感応して来てるのだろうと思った。