建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第34話  韓国両班の集落と住居.3 夏と冬の顔を持つ住居
 
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韓国の住居と日本の住居の大きな違いはと言えば、誰もが第一に独特な暖房装置「オンドル」を挙げるだろう。これは床下に煙道を設け、その熱を巧みに利用し暖房とする、今流にいえば床暖房である。煮炊きをする台所の竈と一体化させたりして、省エネルギー住居ともなっているのだ。
 
暖房効果を高める為に部屋の大きさも押さえ、床、壁、天井までを韓紙で目貼りする。その韓紙特有の柔らかさによるインテリアがもう一つの特長でもある。どちらかと言えば私はオンドル効果の副産物とも取れるこの韓紙貼りの部屋「オンドル房(バン)」に韓国らしい魅力を感じている。
 
日本の大きさで言えば丁度、4、5畳位の部屋であろう。天井が低く頭に当たりそうに思えるが、座るとその高さなんとも言えない居心地の良さを与える。韓紙ばりの部屋は、白い繭のカプセルの中に入ったような安心感がある。冬の冴えた寒さもこの中に入り、布団をかければ床下からホンノリした温かさが身体を隈無く暖めてくれる。
 
韓国は大陸性気候と海洋性気候を持つ。温暖の差が激しく、特に真冬はソウルでも-10℃を越える事がたびたびある。その時はあのソウル市街を流れる大河漢江(ハンガン)さえ凍結してしまう。流れているべきものが流れてない。大河の中で船が立ち往生している風景は、私達には異常に見えた。同じような美しい四季の変化を持つ隣の国なのだが、この時ばかりは異国を感じてしまう。そして凍った大河を見つめていると「住まいは夏をむねとして築くべき」とした日本的住まい観が音を立てて崩れて行く。
 
「外が凍てつくような日、オンドルバンの中で火鉢を囲み甘酒や、栗を焼いて食べるのが子供の頃の思い出です」三月初旬の澄んだ寒さの中、両班集落河回マウルで、今年で78才になると言う同行者の李先生が言葉を噛み締めるように言われた。視線の向こうには、おそらく韓国の住居でしか味わえない厳しい冬の生活や風景、そしてオンドルバンや独特の住空間の思い出があるのだろうと感じた。

 

   

 

 

 


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