建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第31話  祭りと祀りの場 鼓楼はトン族の喜怒哀楽の象徴
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建物は方形間取りをしていた。間口、奥行とも13m強、直径45cmもある杉の丸柱が建物の周囲の壁に各々4本ずつ、しっかりと立てられていた。茶色に灼けた木壁と太い杉丸柱の佇まいは、屋根の多層な姿をぬきにすれば、どこか日本の古い山寺のようにも思える。
屋根は破風を白い漆喰で塗りかため、最下部の屋根から上へと少しずつ小さく造られている。数えたら全部で9層の屋根になっていた。
先端の最も小さい入毋屋型をした屋根まで高さ約13m。
 
高さ13mはそれ程の高さではない。しかし集落の外から見ると際立って高く、聳え立つように見えるのは、下から上へと小さくリズミカルに築いたこの屋根造りの技法が持たらすも効果であったのだ。内部を覗くと薄暗がりに人の気配がした。
 
中にに入っても良いかと訪ねたら気軽に許された。日射しの強い外とは異なり内部は空気がひんやりと涼しい。目が内部の暗さに慣れてきた。壁を背にし、かなりの数の住民がこちらを見て笑っている。年寄りと子供達が多い。
 
「馬畔の鼓楼によ~うこそ、いらっさいました」そのような歓迎をこめた言葉なのだろうか、歌なのだろうか、壁のあちらこちらから聞こえてくる。タイムカプセルで突然何百年も昔の世界へ、しかもとても懐かしい空間へ舞い降りたような気分である。
 
部屋の中央に4本の柱が立てられている。その4本の柱に囲まれた中が神を祀る場所だ。天井を見上げるとその上に巨大な太鼓が下げられていた。祀りにでも使うのかと尋ねたら、村に火災や災害が合った時に太鼓をたたき人々に危険を知らせるのだと言う。日本のかっての火の見櫓を思い出した。
 
鼓楼の建つ前は小さな広場になっている。広場は収穫の取り入れの場、そして祭りの好きのトン族の祭りの場になる。鼓楼は集会機能だけでなく、祖先を祀り、火の見櫓的な役割や、広場と一体して祭りの場にもなる。
 
鼓楼はトン族そのものなのだ。村人の生活、その喜怒哀楽を塔の建築へと形象化したものなのかもしれないと思った。
 

 

   

 

 

 


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