建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第31話  木の民トン族の集落.3
      二つの木造建築、<鼓楼>と<風雨橋>
 
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トン族には世界に誇る二つの素晴らしい木造建築がある。一つは本誌5月号で報告した屋根付き木造橋、「風雨橋」。そして二つ目は「鼓楼」と呼ばれる屋根が多層に造られた塔状建築である。
 
どちらの施設もトン族の集落にはなくてはならない施設で、集落を訪れると必ず出会う。風雨橋は谷間いの人家と離れた場所に築かれている。つまり集落の周縁部に、隣村との村境ともなる施設なのだが、鼓楼は比較的村の中央部、それも高台や地形の極みに建てられている事が多い。
 
風雨橋が村外れに在って主に人々の村への出入りを監視する、ある意味で集落のゲート(村の門)としての役割をになえば、鼓楼は村の中心部に置かれ主に村人の集会、会合の役割をになう施設となる。
 
トン族は村を新しく造るにあたり、まず鼓楼を築く事から始めると言う。鼓楼は単に村の集会施設としての機能をとるだけではなく、村人達の祖先を祀る場所でもあるのだ。仲間を大切にし祖先を敬うトン族ならではの施設である。
 
谷間の渓流に沿って築かれた馬畔と呼ばれる集落にその鼓楼を訪ねた。馬畔の集落は世帯500程、約2000人程が暮らす典型的なトン族の農村集落である。鼓楼は、棚田を背景に村の高台に建てられていた。
 
遠望すると鼓楼の屋根は幾層にも分かれながら、軽快に空に向かって建ちあがっている。まるで集落の中から抜きでた華麗な天守閣のように、周囲の住居から一段と際立って見える。トン族の木造建築対する誇りと、技が暗黙の塔となってこちらに伝わってくる。
 
しばし谷間の水田から見とれていると、塔の辺から沢山の子供達がやって来た。ずっと前から私達を見ていたのであろう。私達の動きがあまりに鈍いので、たまらず向こうからやって来たのだ。何と人懐こい子供達なのか。子供達に急がされるようにして鼓楼の前に立った。

 

   

 

 

 


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