建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第29話  木の民トン族の集落.1
      棚田にかかる木造屋根付き橋<風雨橋>


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三江の町を出て1時間程、車は険しい山間の道を渓流に沿って進む。途中まで稲刈りを目前にした棚田が黄金色に輝いていたのに、この辺りまで来るとまだ穂のでない緑の稲に変わる。稲の二期作が行われているのだ。
 
秋と初夏を同時に体験しているような不思議な感覚が身を襲う。トン族の住む古い集落が谷沿いの斜面に沿って続く。目指す風雨橋はその集落のはずれにある。迷路のような細い集落内の小道をやっとの思いで駈け下りると、そこは谷間で、一面の緑の棚田に出た。
 
風雨橋はその緑の棚田に沿った清流に架けられていた。風に稲が波のようにゆれ、風雨橋は恰もその波を受けて漕ぎ出す帆掛け船のように、軽快で美しく輝いて見えた。
 
近寄って見ると、清流の上に5本の橋脚がすくっと建てられている。その橋脚の真上が5層の屋根を持つ5棟の楼閣だ。その楼閣同士を屋根付き廊下が結び全体として一つの橋の姿とさせているのだ。
 
トン族の誇る程陽風雨橋である。現在の橋はは1916年頃の建立と言う。長さ77m、巾3.7m、塔の高さ10.6mは木造の屋根付き橋としては巨大だ。しかし辺の景観に溶け込んで少しも風景として違和感を感じさせない。橋の中に入ってみた。
 
橋の両側の手すり越しにベンチが取り付けられ、多くの村人達が休んでいた。棚田を渡り、吹く風が驚くように心地い。橋の中程に祠が安置されている。人々の幸いや、村の平和を祈願しての事なのだろう。
 
案内してもらったトン族の娘さんの話では、橋は若い人の恋の歌垣の場、そして出合いの場ににも利用されていると言う。風雨橋は、村人の実に多様な役割に対応しているようだ。そうした村人の熱い思いが込められ、この優雅で力強い形となったのだろう。
 
この橋は単に者や物が渡る橋としてのみ在るのでなく、村人の心の思いを過去に未来に繋ぐ橋でも在るのだろう。だからこの橋は多くの人々の心を捕らえ美しく輝いて見えるのだ。そして見る者の心の有り様で、様々な姿に変化して見えたりもする。燃え盛る炎のように‥‥。沢山の花のように‥‥。静かな樹木の姿ように‥‥‥。
 

 

   

 

 

 


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