建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第27話  中国水辺の集落.2
      水路は生きている 湖に囲まれた周庄
 
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地平の彼方に夕日が沈む。いや沈もうとしているのだが果て仕なく広がる大地の中で,なかなか沈まないでいるのだ。弱い陽の光が辺一面にひろがりって、風景がぼやけて黄金に見える。
 
ぼやけた靄の中に動いて見えるのは,圧倒的な数の自転車。江南地方の夕暮れのラッシュアワー,私達の車は家路を急ぐ自転車の波に囲まれてしまった。目指す周庄の集落は靄に白く光る湖の先きだというが,蘇州を離れてからすでに数時間同じ風景ばかり観てるように思える。
 
案内人は船ならあっという間に到着できる距離だと言う。事実江南地方に散在する水辺の集落,水郷鎮を結ぶもっとも便利で発達した乗物は小船であった。
 
つい最近まで住民はみな小船を利用していたと言う。ましてや目指す周庄の集落は,そうした水郷鎮の中でも周囲に水辺が多く,言わば陸の孤島のような集落であるらしいからなをさらなのだろう。
 
水郷鎮の鎮とは,日本では集落や村を意味する言葉だが,その機能や役割からするとより都市に近い。都市と言っても小規模なもの,鎮は人口にして数千人単位のものが多い。周辺に散在する農村地帯の生産物の集散地と,その売り買いの場として発達してきたようである。
 
周辺農村の人々が集まり様々な情報を交換する。鎮は農民にとって経済,文化の中心地でもあったのだ。その情報を伝えたのが都市と関係していた商人達でもある。見方を変えると鎮は都市と農村を繋ぐ重要な中継地,そうした水辺の集落とも受けとれる。
 
水辺の鎮で最も重要なのは,集落内を網の目のように無数に走る水路(運河)である。水路は人々の日々の暮らしに深く関わって来ている。人や物の移動や輸送の場として,時には生活用水に下水の場にもなる。人の身体に例えると血管のようなもの,それも木目細かく造られた毛細血管である。だから水辺の集落の骨格はこの水路によって概ね決まってしまうし,水路は生きていなければならない。江南地方の豊かさ,経済の発展はこの水路によるところが多い。

 

   

 

 

 


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