建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第24話  アルティプラーノの集落.2
      土の塔を持つアンデスの村

土壁の囲み庭の家 インディオの素朴な生活

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遠くから奇妙に見えた土の塔は,近くで見ると先に行く程にくびれた方形の教会の塔であった。教会塔だけが他の住居と異なり,先端に寄せ棟の屋根をのせた形をしている。高さにして14~15mはあるだろう。
 
西洋のキリスト教の教会の形に慣れている私達には,どう見てもそれが教会とは見えにくい。内部に入っても同様でキリストや,マリアのイコンの他にインデオの神々が室内をうめ尽くす。「これは一体なんなのだ‥‥‥ムムム。」言葉にならない。教会と見るよりは土壁の大きな納谷に近い空間。それも東西の神々を安置しそれらが怪しく光る納谷か棲み家。
 
土の塔の近くでインデイオの小さな店を見つけた。住居の造りと同じの日干しレンガを積み,間口も奥行きも3mほどでの素朴な店だ。商品と言っても埃だらけのコーラと,子供相手の僅かな駄菓子,それに分けの解らない玩具のような物が並ぶ程度の店だ。そこで油の滲んだ包装紙に包まれた駄菓子を幾つかと,埃まみれのコーラを買った。
 
食べたくて買ったのではない。その店の人の良さそうな女将を見て「何処かこの辺で住居を見せてくれないか」との交渉のために買ったのだ。当然答えによっては,さらにコーラを数本買い足しても良い、との思いさえあった。
 
この手は当たった。困り果てた小太りの女将は,何人かの近隣に相談したらしいが,結局自分の家なら良いと承諾してくれた。やとの思いで拒否続きであったインデイオの住まいに入る事ができた。
 
案内された住居は,周囲を高さ2m程の土壁の塀でかこまれていた。囲みの大きさは大凡15m×30m,その壁を一部利用して住居の棟が幾つか築かれている。棟を数えると5棟あった。
この周辺のインデイオの住居は,各部屋を分棟する方法をとっているようだ。台所,家族の寝室,客間,納谷等だ。それらの人間の住まいと離れて,囲み庭の奥に家畜小屋が造られていた。各々の棟と棟の間は家畜の遊び場や,農作業の場,さらには将来に向けての増築スペースになると言う。
 
住まいの中に入ってみた。内部は様々な家財具や衣類等が置かれ,薄暗く土の匂いと,複雑な言って見れば生活の匂いが漂う。お世辞にも綺麗な住まい等とは言えない。それを知ってか,我々に付いてきたインデイオの小太り女将が突然腹を抱えて笑った。我々も笑った。何日ぶりかに笑った。笑うと酸素が不足するせいか頭が割れるように痛い。
 
フラフラしながら思った。インデイオ達はけして閉鎖的でない,彼等の辛い歴史や,余りにも厳しい自然環境をみて我々が勝手に決めつけているのかも知れないと。
 

 

   

 

 

 


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