建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第22話  ”アンデスの涙”が砂漠を潤す

オアシスの町とバリアーダ 一夜にできる不法占拠の町

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狙われ易いのは都市郊外の公園や広場,空き地等である。そうした場に数戸のバラックが建てられると,翌日はその数倍に,そしてその翌日はさらにその数倍に膨れ上がってしまう。極端な話、一夜にして小さな町が出来てしまうのだ。
 
バラックの造りはユニークである。板の切れ端,ダンボール紙,トタン板,ビニール,ヨシズ,布,石‥‥等。都市に在るもの,落ちているもの,何でもが彼等の住まいの材料になってしまう。購入するものなど何もない。彼等は街で調達すると言う。
 
お金を出さないで手に入れるのが調達することなのだ。そもそも土地も彼等の物ではないし,そこに住む許しも得てはいないのだ。不法占拠の町,こうした場を南米では「バリアーダ」とか「ファべーラ」と呼んでいる。
 
この方法で当然のように電気も,水道も調達してしまうのだ。ひとたび引き込まれた電線や配管は,バリヤーダ内をあっと言う間に巡リ,気が付いた時は役人も誰も手を出せない状態になっているとか。こうした不法占拠の住区や街が,ペルー国内で数百ケ所もあるという。リマの周囲には特に多い。私達は数カ所のバリアーダを訪れた。外から俯瞰するとバラックどうしが,一見複雑にからみ合って分かりにくそうであるが,中に入ると個々の住まいが意外と整然と並んで見える。
 
間口2~3m,奥行き4~6m程,内部を仕切るものは布や,ダンボール,そこに家族全員が住む。10人近いこともある。個々のプライバシーなどない。第一,道路のような空き地に面して出入りするドアがない住まいが多い。
 
ここには取り仕切るボスや権力者の類いはいない。冗談でドロボーもいない等と嘘ぶく。故里のアンデスの村の生活のような,煩わしい人間関係もないから気楽だともいう。生活していて何が一番困るか,と尋ねたら「トイレがない事が困るね,後は大概上手くやれる」と答えてくれた。トイレは調達出来ないのだ。
 
バリアーダの向こうに見えるるのはオアシスの街。彼等にとって夢が一杯つまった近代都市だ。一方その都市こそ彼等の不幸の元兇でもあるのだ。「そんなこた~百も承知」と答えるだろうか?。
アンデスの涙の中で,バリアーダの住民は今も増えつづけてる。
 

 

   

 

 

 


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