寄り目で、三角頭が美人といったら、笑われるかも知れないが、かつてマヤ人の美人の基準はそうであったという。
そのために、まだ小さな子供の時に頭に板をあてがい、三角頭にした。寄り目は両目の間に振り子を下げ、強引に生み出したらしい。日本でも丸顔が良いとか、うりざね顔が良いとか(今日では鶏冠に鼻かん、タトゥーと何でもありのようで……)、そのつど、時代の流れの中で、美人に関する解釈は大きく変わってきているのだから、まんざら出鱈目の話ではないのだろう。そうした逸話のような話が、マヤ文化には事欠かない。
が、私たちが出会ったマヤ人の人々は、寄り目や三角頭どころか、黒い瞳と黒髪をきっちり後ろに束ねた美しい女性たちであった。
彼女たちは各々に、艶やかなマヤ織りの民族衣装を纏っていた。皆、健康そうで働き者。好奇心が強く、その上恥ずかしがり屋。ほんの数十年前まで、日本の女性の姿も、そのようであったように記憶するのだが……。
男も女も体つきから、顔つき、まるで日本人そっくりだ。数万年前、アジア大陸から移動して行った私たちと同じモンゴロイドが、祖先なのだから当たり前なのかも知れない。
話は余談になるが、熱帯雨林のあるインディオの集落を訪れた時のこと。抜き身の万刀を手にした一族に囲まれた。いつ襲われるかと、緊張し身構えたにもかかわらず、当の一族は万刀を振りかざすわけでもなく、私たちを見てニコニコしながら話掛けてきたのだ。
何が起こったかさっぱりわからないままに、私たちは集落を無事に抜けたのだが、後で、彼らは私たちを日本人(外国人)とは気づいてなかったと知らされて、さらに驚いた。
彼らは、私たちを隣村の、自動車を持つ豊かな○○族と勘違いしていたのである。相手にとっても、私たちが彼らにこの上なくよく似ているということなのだろう。これは楽しい半面、部族間の争いなどに巻き込まれやすく、集落を旅する上では大変危険なのだ。