建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第15話  ネパール中央高地の集落.2
      ネワールの人の町・バクタプル
 
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 雲上の生活者。急斜面にわずかに残る平地にすがりつくように生きる人々の生活に出会ってから、地上の生活、つまり平坦地の生活者が、いかに気楽なものかわかったような気がする。
 これは不器用な者が、慣れない平均台を歩いたようなもので、歩き終わった、地面に下りた、あの安堵感にも似ている。
 ネパールには、そうした山岳地を好み住む民族と比較的平地の多い盆地を好む民族がいる。前回(2月号)掲載した雲上の集落は、チベット系の民族であり、その代表には、エベレストの麓を生活の場としているシェルパ族などがいる。彼たちは、どちらかというと都市を創らず、山地に小さな集落を築く。一方、盆地に住む民族の代表は、ネワール族であり、彼たちは平地に群れて住む。
 ネワールは王国ネパールの語源であるともいわれ、カトマンドゥ盆地に古くから住みついた先住民である。
 現在、カトマンドゥ盆地には、三つの都市がある。カトマンドゥ、バタン、バクタプルの三都である。いずれの都市も、十五世紀ネワールの王国・マツラ王朝の首都として栄えた古い町である。ネワール人は独自の言語を話し、手先が大変器用で、多くのすぐれた工芸品や建築を残していっている。いわゆるネワール芸術と呼ばれるものだが、その集大成が三つの都市といっても過言ではない。
 町中の建築が、彼たちの彫刻で埋めつくされているのだ。その緻密な加工精度は目を見張るものがあり、私にはその様が、日本で例えれば、仏壇であるとか祭りの神輿に思われた。神輿建築、または仏壇建築、それらの彫刻モチーフには、さまざまな生き物や人間の姿、多様な神々の姿が刻まれていた。
 身の毛がよだつような代物から、思わず笑い出したくなるようなもの、さらには子供や婦女子には少し避けたくなるようなエッチな代物まで、さまざまである。
 ネワール人は先住民として、仏教とヒンドゥー教の影響を受けている。がしかし、人々はどちらの神仏もあまり区別することなく大切にしているのだ。その結果が、装飾多様の仏壇もしくわ神輿建築となったとも見られる。
 二つの宗教の神仏は、寺院はもとより、町中に、広場に、通りに、住まいに、水中に、田畑に、樹木に……。まあ、人々のいる場所すべてに安置されている。
 

 

   

 

 

 


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