建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第10話  トルコ中央高地の集落.2 祈るための住居

イスラムの厳しい戒律と奇岩の中に沈む集落

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 いずれにしても、この地には数百という修道院が築かれ、一時期ではあれ、初期・中期ビザンツ教会の基本理念の形成の場として、中世キリスト教会に深くかかわっていた。そして、厳しい環境下の中で培わされた修道士たちの宗教理念は、ある意味で中世暗黒時代の封建社会を支え、治安維持の論理的手法として、支配者たちに利用されていくことになる。
 これらに代わってこの地に入るのが、イスラムである。
 イスラムの厳しい戒律(カダル)と、個や家族を越えた連帯意識(ウンマ)が、当時の肥大化し、腐敗化しつつあった中世キリスト教会に取って代わるのは、当然の流れであったのかも知れない。
 少し話が宗教的内容に傾いてしまったが、現在この地に築かれている住居や集落の背景となる、岩山や渓谷の至る所に、洞窟や修道院跡があり、ない場所を探すことのほうが難しいのだ。
 したがって、住居の造り方には、大きく三つのタイプが見られる。
 一つは、かつての洞窟や遺構をそのまま利用して住んでいるタイプ。第二には、その洞窟の前に、石や日干レンガを背の高さほどに積み上げて、囲み庭として利用しているタイプ。第三は、独自に斜面地に囲み庭型の住居を築くタイプである。
 この三つのタイプは、それぞれ別々にあるのではなく、一つの集落の中で混在して築かれている。今日では、第一のタイプは少なくなり、第二、第三の住居が多い。
 冬期の寒さから逃れるために、今日でも斜面地に一部穴を掘り込み、半穴居住居化をしている住居も多い。
 カッパドキヤ地方の住居は、自然景観に対峙し、前に出る姿としてよりも、その自然の中に入り込み、どちらかというと、背景に沈み込むことを基調にしているかに思える。
 そう見えるのは、人間のすべての造形力や創造力を越えた、この地独特の地殻のみを残して林立する奇岩・塔状石の景観によるのかも知れない。この風化され、浸蝕され、残された奇岩の群れが、私たちには、この世ではない、あの世(地獄)をイメージさせるのだろう。
 

 

   

 

 

 


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