建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第8話  マグレブの集落.2 砂漠のオアシス
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 雪を抱くアトラスの山を下りると、そこはアルジェリア、黄砂のサハラ砂漠であった。五月中旬、容赦なく照りつける灼熱の太陽は、目に入るすべての物から、姿や形を奪い、微細な砂とさせてしまったかのようで、あたりは砂一色。遥かかなた地平線へと続いていって、空と交わっている。
 三六〇度が砂と蒼い空だ。
 モロッコからアルジェリアへと、ほんの二~三日前までは、標高四千メートル級の山越えで、寒さと瞬時に変る山嶺の景観に心を奪われていた。それが一夜明けると、見渡すかぎりの砂漠の中にいる。このあまりにも急激に体験した、二つの美しく、そして厳しい、対極的な自然との出会いに、言葉を失ってしまった。
 これは、私にとって風景のカルチャーショックのようなものであった。日本なら、険しい山岳地域といわれる所でも、平地から里山、そして徐々に奥山へと、季節なら春から夏へとか、変化の”お膳立て”というか前奏、そうした連続性があるのだが、この地にはそれがない。
 自然はどこでも厳しく、明快な切れ目を示して表われる。それが私たちには、対極して立つ異なる景観として迫ってくるのである。要は、他のものにたとえれば乾と潤、明と暗とか、裏と表かが明瞭で、曖昧な部分が見えてこない。
 これまでの集落調査の体験からすると、厳しい自然環境、そして景観の切れや、縁の明快さは、当然、集落や住居の構造や仕組みに深く関わってくるものだ。このサハラの中のどこかに素晴らしい集落があるはず。私たちは、それを求めてサハラを南下した。
 二日目のことであった。それまで平坦で、どこまでも滑らかであった砂丘が、突然大きく口を開けたような、谷に出た。砂漠の商隊に”ムザップの谷”と呼ばれる一大オアシスである。谷は、深いすり鉢状で、緩やかにカーブをしながら南に続いている。谷底にいくつかの小山が見える。小山の頂点になんとも不思議な格好をした塔が見える。そして、その塔を取り囲むように、無数の建物がはりついて見えた。
 

 

   

 

 

 


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