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第5話 青森檜葉

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檜葉のヒノキチオールがもつ驚異的な耐朽性と抗菌性に見る特長

 青森檜葉の第一の特長は、なんといっても驚異的な耐朽性と抗菌性にある。青森檜葉はシロアリや水などの侵食に強く、腐りにくい。こうした評価は全国各地で住宅を築くなら、青森檜葉の土台が最良とした習慣の中でも立証されている。事実、平泉の中尊寺金色堂は約700年前に築かれた総檜葉づくりの建築。青森県を中心に東北地方には青森檜葉を使用した古建築が数多く残されている。檜葉材のもつ強い抗菌力は、檜葉に含まれるヒノキチオールという成分によるものだ。“総檜葉づくりの家には、蚊が3年間入らない”などといわれるのも、この檜葉独特のヒノキチオール効果なのである。今日、これらの効果が建築材としてだけでなく、健康に関連した商品、例えばアトピー性皮膚炎に対する効果を示すメディカル商品、石鹸やシャンプーなどのサニタリー商品、食品の鮮度保持用商品などとして多方面からの利用が始まっている。(株)成田林業土木の成田剛社長は、檜葉のもつそうした効果に注目され、檜葉材のオガ粉や廃材から檜葉油を取り出す工場をつくられている。100㎏の檜葉から1㎏の檜葉油しかとれないというが、現在、県内では年間80トンの檜葉油を生産しており、特に檜葉油抽出と同時に取れる檜葉留出水は、年々、需要が高くなっているという。樹齢200年以上の檜葉の耐朽性は、かつての栗材に代わる、枕木用材としても使用された。コンクリート枕木が主流となった今日でも、東海道新幹線の橋梁枕木にはすべて檜葉材が使用されているとか、東京都内の地下鉄でポイント部の枕木にも檜葉材が使用されているなどの例を聞く。
 檜葉材の特長は耐朽性、抗菌性の他にも、木目が緻密で美しいことや、杉に比較して強度が高いことも挙げられる。そうした檜葉材の総合的特長が近年、住宅のみならず、公共施設や社屋、橋などの構築物にも利用されだしている。

遊具から日本一の木造三連太鼓橋まで、檜葉材の広い利用

 津軽地方の鶴田町、“津軽富士見湖”に架けられた木造三連太鼓橋“鶴の舞橋”は、幅3m、中間2カ所に休憩所をもつ、全長300mの総檜葉づくりの木造橋である。案内していただいたのは、鶴田町商工観光課の赤城敦氏である。赤城氏の説明によると、この橋は、木造三連太鼓橋では日本最大級のものであり、これだけの巨大な木造橋を築くには、様々な関係諸機関との調整、許可が大変だったし、何よりも樹齢200年前後の檜葉材をこれほど大量に集めるのに苦労した、とのことである。その先頭に立って県内はおろか、全国各地を歩かれたのが現在の鶴田町長・中野?司氏である。中野町長自身、森林組合の理事の経験もある檜葉の理解者。また、鶴による町おこしや国際交流の町づくりなど、アイデア町長だ。鶴の舞橋は、平成6年に完成。当時、津軽富士見湖を訪れる人は、年間2000~3000人であったが、橋が完成してから年間30万人近い行楽者が訪れるという。地域を想う心が檜葉材の活用になり、しかも中途半端な施設ではなく、日本一の木造三連太鼓橋を生んだのであろう。檜葉材を会社の本社屋に全面的に使用した例もある。市浦村の(株)高橋林業土木の本社屋、事務所、研修所、展示場の延べ面積1140㎡強の建築群である。平成8年に完成しているが、中に入ると今でも各所から檜葉の香りが漂ってくる。コンクリートづくりのオフィス空間に慣れてしまっている者には、とても羨ましい作業空間というか、癒しの場にも感じられたのである。

 

   

 

 

 


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