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第2話 尾鷲檜

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 その先頭に立たれているのが、海山町の林業家速水亨さん。尾鷲林業地域とは少し離れているが、あの瀧原宮のある大宮町の林業家、吉田善三郎さんである。二人とも紀伊を代表する林業家であると同時に、日本を代表する林業経営者でもある。
 二人とも日本の林業が国際競争の中でも生き残られるようにと、長らく取り組んでこられているが、目的は同じでも、その方法は少し異なる。
 吉田さんは、11代目の当主。創業300年にもなる林業家であり、森林の持つ里山的なかつての機能に注目し、山林の一部を地域の憩いの場や、都市との交流の場として活用している。“語らいの里 噺野”の建設にあたり、昭和20~30年前後に見られた、トンボやホタル、川にはメダカやアマゴが泳ぎ、山や里には草花が咲き乱れる、そうした自然を、環境を、自分の森林を通して再びよみがえらせようとしている。森林のもつ社会性を、昭和30年代までどこでも見られたあの懐かしい、人や自然、生き物が共生できた時代に求めたのだと思う。この構想の完成予定は平成55年。それは、吉田さんが100歳になる頃だという。環境や、自然と立ち向かう林業家らしい、時のかかる森林にかける思いである。

 新しい森林づくりを目指す速水亨さんの森林認証
 速水亨さんの住む町、海山町は、尾鷲林業の中心地。今でも古い時代の森林施業法が息づくところでもある。速水さんも吉田さんに負けず劣らずの代々続く林業旧家。そうした地域の中で速水林業は、常に新しい林業を目指され、その施業法は全国の林業経営者の注目の的となっている。
 そうした速水林業の志した林業が、その環境づくりや自然が、日本を超え、世界に通じるか否かを試されたのだ。
 FSC森林認証の取得。日本の林業経営者としては初めてのことである。平成9年の夏に日本林業経営者協会の理事として、フィンランド・ヘルシンキのISO会合に出席された速水さんは、諸外国林業者や、企業が皆、環境問題に積極的なのに驚かれ、そうした森林分野の環境規格を取得する必要を実感されたのだという。
 このFSCとはFOREST STEWARDSHIP COUNCIL の略で森林管理協議会と呼ばれている。
 その設立は、’80年代の熱帯林保護の過熱に端を発した、ヨーロッパでの木材製品への無差別な不買運動がきっかけとなった。そういった運動がかえって健全な森林経営を破綻に追い込んでいくことを危惧し、環境NGOなどを中心に、熱帯林破壊と無関係な、健全な経営がなされている森林を差別化するという考えが生まれたのだ。さらに、’92年にブラジル環境サミットでアジェンダ21が採択され、持続的な森林経営の確立を目指した動きが世界的に始まった。ただ、その一方で環境問題が一種の経済的トレンドと化し、規制のない環境ラベルの乱発をも招き、消費者の不信感を生み出した。そういった中で、いわゆるグローバル・スタンダードとして、民間レベルでの非営利・非政府組織の森林認証団体として誕生したのがFSCである。世界自然保護基金(WWF)が中心となり、①森林資源の持続性 ②森林生態系の維持 ③社会経済的な有益性 などで森林経営を評価し、そこから生産された木材や製品にラベルを貼って、選択的消費を喚起することで、市場レベルで望ましい森林経営を、より持続的なものに誘導することを目的として設立されたものだ。
 こうした流れを振り返り、速水さんは、日本が地域レベルでのコンセンサスを得るようなガイドラインがないことを嘆いておられた。
 NGOなどの民間活動が活発でない日本では、グリーン購入なども根付いておらず、こうした認証材の扱いはまだこれからで、認知されるには時間がかかるだろうが、設計事務所や一部の消費者からの問い合わせが多くなってきているという。

 

   

 

 

 


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