建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第37話  バリ島.1 神々の島・バリ島の集落と子供たち
 
 


 

 
 
 
 
 
 
 
 

 
今回より少し志向を変えて、集落の中の公的な部分や賑わい景観(例えば人々の憩いの広場や通り、市場、教会や社寺、森や河、田畑等など)に視点を当てて掲載して行きたいと思います。
もちろん今まで同様にユニークな世界の住居も合わせて報告して参りますので、これまで同様に宜しく願います。
 
今回は南海の楽園バリ島の集落と暮らし、バリ島は赤道直下に近いので余り寒暖の差がない。年平均27度、一年中が常夏の国、草花が咲き乱れ、至るとこに果物が実る。寒さに震える日本の正月には少し酷な話しかと‥‥‥。せめて炬燵に入り、南国の果物等でも召し上がりながら最後までおつき合い願います。
 
椰子やバナナの樹の茂る下で子供達が遊んでいる。その周りで犬が走り、豚や鶏が寝転ぶ、長閑なバリ島の居住地域の風景。バリ島は「神々の島」と言われるが子供や家畜の島でもあるようだ。何処に行っても人なつこい子供らに出会うし、そして家畜の熱烈な歓迎にあう。動物好きの筆者にも歓迎過ぎにはまいった。
 
人口の95%以上がヒンズー教徒である。神々の島の名に相応しく、ヒンズーの神々を祀る寺はバリ島内に2万以上も在ると言う。一つの村(デサ)に必ず3つ以上の寺が在るとも言うのだ。熱心なヒンズー教徒の多いバリ島の人々はさらに、自分の家の敷地内にも独自に神々の祠や、家の守護神を祀る小さな寺をたてる。だから少しオーバーに見ると、島中の村は寺だらけで、その数、十数万にもなるらしい。何処に行ってもヒンズーの寺が在る。そしてその周りに子供達が遊ぶ。いや子供の遊ぶ所に寺が在るのか、いずれにしても元気に遊ぶ子供と寺が多い。
 
古い寺や、集落の景観は一般には動きや色に乏しく淋しく見えるのだが、ここは子供達によって生き生きし、集落全体が明るく輝いて見えるのだ。寺は神々や、死んで祀られる人を忍び思う場所、過去を伝える場所なのであろうが、ここの寺は不思議と過去より未来を感じる。
 
日本にもかって村々に、緑に包まれた小さな神社「鎮地の森」が沢山あって、人々の日常の生活の中に深く関わっていたと聞く。その景観はきっとこのような景観だったのだろうか。鎮地の森を無くし、時が経って、少子化とか言って広場や道ばたで遊ぶ子供の姿が、めっきり少なくなった我国の今日の都市や街からすると、このバリ島の姿は穏やかで、潤いが在りそして若々しく感じてしまう。私は心からその風景を羨ましく思った。
 
両側に住居が続く集落の道を歩いていたら、頭に山積みした果物篭や菓子篭を載せた一行にあった。何の行列かかと案内人に聞けば寺の誕生祭だと言う。さらに彼は「寺は各々210日に一度誕生祭を行います。だから島中必ず何処かで毎日お祭りが在ります」と言う。着飾った男女の行く先はヒンズーの寺なのだ。
 
そのまま行列について寺を訪れた。寺には色とりどりの布や傘が立ち、人の背の高さ程も沢山の果物や菓子の供物(ガボガン)が並べられていた。その量にも驚くが、下から上へと丁寧に積み重ねたその姿にも驚いた。正装をした女性達が供物の周りに座っていた。2万も在る寺で210日に一度、各々がこのように祭りを行っているのだ。決まった宗教を持たない私達には理解出来ない風景である。
 
バリヒンズー教は生活そのものであるのだろう。いや宗教が人々の日常のリズムを永い間支えて来ているのだ。古い寺が活き活きと見えたのは、子供達の元気に遊ぶ姿だけでなく、こうした人々の永年に渡る熱い関わりがあって、それらが何とも言えない集落の景観として、力になっているのだろうと感じた。
 


 
 

 
 

   

 

 

 


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