建築計画研究所 都市梱包工房

ARCHITECTURE DESIGN & CITY PLANNING OFFICE

 


 

 
第26話  中国水辺の集落.1
      運河と水辺の街<東洋のベニス蘇州>

運河に向き合う白漆喰の街並と人々の暮らしを支える橋

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近代ビルに生まれ変って行く蘇州で、まだそうした運河や、水辺景観だけが時が止まっているように懐かしい風情をとどめているのだ。蘇州の外堀、北の船着き場から運河を巡り、外城河沿いにかっての街並へ通る船が出ている。5~6人も乗れば一杯になってしまいそうな木製の小舟だ。藍染め民族衣装を身につけた女性が櫓を握る。
 
観光客相手の姿であろうと思ったら、そうでもない。昔からの出立ちであるという。運河の水の色はくすんだ緑。お世辞にもきれいな水とは言えない。上下水道がほぼ完備されたというがまだこの川の水を飲料水に利用する人々が多いと聞く。小舟は20分もすると広い外堀から、城外の他の町や農村地域を結ぶ細い運河に入る。運河の巾は広いところで6~7m、狭いところでは小舟がやっとすれ違える程度である。
 
その運河に面して白漆喰の壁に黒い瓦屋根の住居が隙間なく並んでいる。各部屋の窓はもちろんのこと、台所や食堂の開口を思い切り運河に開いて設けている家が多い。時には開口部前に石のテラスや階段を取り付けたりして船の乗り降りに対応した建物も在る。かって人々の暮らしが日常の中でいかに運河と結びついてたか,それを物語る景観だ。運河の両側は建物で占められることも在れば、一方が路になる事も在る。
 
いずれの場合も運河に面して人々の生活は開かれており、通りは広場化されたり、露店商が並んだり人で溢れ街は賑わいに満ちていた。そのもっとも賑わう場所が運河に架かる橋なのだ。ここでの橋は運河の上空を単に人や物が移動のための施設としてのみでなく、人々の交流する場、出会う場、そして商いの場としての役割が強い。交流は船を通じてとの水路と陸路があり、橋はその両方の出合いの場所でも在るのだ。
 
「オオイ,安いよ,ヤスイヨ‥‥‥」あっちこっちから呼びかけの声がする。集落の一日は橋のたもとでの商人同志の早朝の掛け合いに始まり、夕暮れの掛け合いに終わる。運河が埋め立てられ道路に変わる地域が多くなっても、水辺の集落では全てに置いて橋が主役なのだ。
 

 

   

 

 

 


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