建築計画研究所 都市梱包工房

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第7話 魚梁瀬杉

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 多くは杉の人工林に下層植生がびっしりと生えている山だ。さらに進むと赤松と杉や檜の混生林に出た。小楢や楢、櫟なども見られる。「将来はいまある広葉樹をできるだけ多くしたい。とくに沢沿いの人工林を長期的には広葉樹へ誘導していきたい」と環境に配慮した森林づくりへの思いを中越さんは述べてくれた。FSC森林認証とFSCマークの商品については尾鷲檜の号で述べたので、詳細は割愛させていただく。檮原森林組合では、森林から産出されるすべての生産物にFSCマークを付け消費者に対し、環境商品としてのブランド化を図っている。そうしたことから、さらにFSC木材を扱う、加工、流通団体として、COC認証も取得している。その加工、流通を担う池川木材工業(有)を仁淀川上流の池川町に訪ねた。池川町と梼原町は距離にして50km、ひと山もふた山も離れている。
 池川木材工業(有)の大原栄博代表は、私たちをFSC認証の対象となった工場やこれから力を入れていきたいという、新しい木材乾燥施設(燻煙による乾燥)に案内してくれた。「これからも可能な限り環境に優しく、人の健康に良い木の商品づくりを目指していきたい」と目を輝かせ、語ってくれた。そして、志しさえしっかりあれば、場所は異なり距離が離れていても、目的は達成できるはずと語る。いま、彼はFSC認証商品の独自の販売ネットワークを模索し始めてもいる。良い商品を少しでも安価に消費者に届けたいために。

人、森林、木材、日本型ログハウスのゆくえ

 高知の中心街といえば、“はりまや橋”。そのはりまや橋商店街には全国初の木造アーケードが存在する。現行の木造施設を取り巻く諸事情から想定すると、様々な規制条項が加わり、事業者や計画者がいかに熱心に事を進めても、実現は不可能にも思える。しかし、高知では実現できた。その背景には、市を中心にした行政の多大な努力や協力があったと聞く。木材を新しい施設に使っていくには、そうした地域としてのまとまりや行政のバックアップが必要なのである。わずか3日間の森林探訪であったが、高知には川上、川下を問わず、官、民を問わず、町をあげ、地域を超えて新しいことへ挑戦しようとする人々の気迫のようなものが感じ取れた。
 馬路村の全村民あげての柚子による村おこしの成功などもそのひとつの例であろう。この村には天然魚梁瀬杉から脱皮しようとする思いがかねてから強く、そうした力が村内のいくつもの施設建設となっている。どれをとっても、それらの施設は創意工夫が感じられるものばかりだ。なによりも、ものづくりの基本にデザインが重要であるとの心得が村民にあるようにも思われた。
 土佐、高知の心情……。それらを木材の活用、ログハウスという視点から見れば、ここ4~5年前から、いく度か本誌企画の「ログハウス・オブ・ザ・イヤー」に入選を果たしている土佐派のポスト&ビームの建築が思い出される。今回もそれらの流れを汲むログハウスを何軒か見ることができた。土佐藩時代から伝わる土佐漆喰に杉の磨き丸太を使用したポスト&ビームの登場。北米やカナダのダイナミックなフォルムが主流になっていたログハウス界に、繊細でシャープな構えをしたポスト&ビームの出現は、大変興味をそそられたのである。それはあたかも、皆が長い間待ち焦がれていた日本型ログハウスの登場を予期させるものだった。そうしたことを含め、今回の森林探訪は、土佐派のログハウスのその後、日本型ログハウスへの期待も心の隅にあったが、それには出会えなかった。そのかわり、いくつかの素晴らしい木造建築に出会えた。それは、土佐の森林に未来があることであり、いつの日か真実に日本型ログハウスが創作されるかもしれないということだ。それを期待したい。竜馬を生んだ土佐の森林から。
 

 

   

 

 

 


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